銀河夢幻伝サジタリウス外伝SS〜入間光と〜

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「あれ?早いね。一人?」

入間光が音楽室のドアの向こうからにゅっと顔を出して言った。

 

「ああ…なるほど。掃除が早く終わったのね。

保健室なんか楽そうでいいよな。

俺なんか教室だから担任のいる前じゃ手ぇ抜けないしね。」

そういいながら机の上にバイオリンケースを置くと

教室の隅においてある譜面台を椅子の前に持ってきた。

 

「うん?もうボーイング書いてある。どうしたのこれ?

え?先輩に教えてもらったの?あ…写させて写させて☆」

 

かばんからペンケースを取り出すと

自分の譜面に移す作業を始めた。

 

ペンケースには女子が好きそうな可愛らしいブルドックのキーホルダー。

 

「え?ああコレね。友達からもらったんだよ。俺犬飼ってるからさ。

フレンチブルドックね。

そうそう、その犬ね“ずんだむし”っていうんだけど、なんでそんな名前かっていうとね…」

 

「まぁ〜た!入間のずんだむし自慢始まった?」

「なんだよ、射川…いいじゃないか、俺のかわいいかわいいワンコちゃんの自慢したって☆」

「気をつけてね、入間のずんだむしの話は少々下品だから。」

「下品じゃないって!!むしろ気品溢れる優雅で上品、なおかつ涙モノなエピソードだと思うぜ?」

「ぷぷぷ…やめてよ…またぁ…ってなにしてんの?

ボーイング決まってたっけ?」

「先輩から聞いたんだって。なら間違いないだろ?

にしてもちょー字が綺麗だよな!!最初パソコンのフォントかと思っちゃったよ。」

「うんうん。本当だね。凄く丁寧で見やすいよね。僕、字があまり得意じゃないから何か文章書くときは代筆お願いしたいくらいだよ。」

「ほんとだよな…あれ…なんか聞こえる…。誰かの携帯バイブしてない?」

「え?…ああ、ごめん僕だ。ちょっと失礼☆」

 

「また弟君かなぁ…ホントあいつらは仲良し兄弟だよな。羨ましいぜ。」

 

そういいながら私の楽譜と自分の楽譜を並べて必死にボーイングを移す入間君。

 

「あれ?ここ上げ弓なんだ…そっか…そうだよな…こうしてアップダウンアップダウン…

本当だ…。」

一人ぶつぶつと呟く入間君。

 

「ん?なに?俺の顔に何か付いてる?

え?ああごめん!楽譜使うんだよね…ちょっとまって…あと1ページ…っと…。」

 

ボーイングを書き写し終えると最初のページから誤字脱字がないか

チェックを始める。

 

よくみてみると入間君…まつ毛が長い…

窓の向こうから差し込む午後の柔らかな日差しを受け白い制服がふわりと膨らんで見える。

なんとなく入間君がまぶしく見えた。

「でさぁ…って聞いてる?

なに?

俺に見とれてた?あはは…ボーイング写させてくれたお礼。

いくらでも見とれてくれちゃって構わないよ!なんならきめポーズしてやろうか?

どう?それともこうかな?あはは…って

あ〜、ごめんごめん。怒らなくてもいいじゃない!!

まぁ、怒った顔もかわいいけどさ…て俺何言ってんだぁ?

そうそう、それはいいとして話戻るけどぉ、

ボーイング書いたって事はもう曲さらった?

良かったら一緒に合わせてみない?

え?俺が初見だけど大丈夫かって?

まかせてまかせて☆

今ボーイング書き写しながら譜読みしたし

この曲そんなに難しくなさそうだから!

あ、もしかしたらボーイング間違えるかもしれないけど

そこは勘弁ね。

じゃ、弾こうか?

よし、いくよ?

1,2の3!」

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